あの”スポーツトイ”をヒットさせた社長の夫婦論

キャスターボード 「リップスティックDLX」というヒット玩具をご存知だろうか?
ボードの上で体をひねりながら前進する玩具で、遊びながらバランス感覚が鍛えられる。
その玩具を扱うのが2018年、30周年を迎えたラングスジャパンだ。
お話を伺うと、あらゆる面においてバランス感覚を磨く大切さが見えてきた。

Photo:NATSUKI MATSUO(NAOTO OHKAWA PHOTOGRAPHY.inc) Text:MIKAKO HIROSE

ビジネスは、地面を思い切り蹴って勢いよくボードに乗るようなもの

 年長さんと小1、小3の3人のママだった当時34歳の小林美紀社長が、家族以外の人もハッピーにする意義ある仕事がしたいと始めたのがラングスジャパンだ。ビジネス経験は一切ない。「夫は医師として〝治す〞仕事をしていたので、私は病気にならない〝身体作り〞の手助けを何かしたくて」。
 そんなある日、ブーメランと出会う。「これだ!」と確信した小林社長は、オーストラリアのラングス本社へすぐ連絡。思い切りの良さと大胆さは、キャスターボードそのもの。後ろ足で地面を蹴り、勢いをつけないとボードには乗り込めない。「息子も医学部へ進み、娘は去年立ち上げた代官山のトレーニングジムで健康な〝身体の維持〞を社会に提供しています。治す・作る・維持の3軸で、家族みんなで人々の健康に貢献するのがずっと願いでした」。

世の中に貢献したいという思いは夫婦の共通の意識

 前述した通り、ラングスジャパンの歴史はブーメランに始まる。「それまでのブーメランといえば、投げてもあさっての方向に飛んだっきり戻ってこないものばかり。私が出会ったブーメランは、思い切り投げた途端、風を切って大空を旋回し、私の手元に戻ってきました。きっと流体力学やジャイロの法則など様々な自然の摂理が働いているのでしょう。夫婦ともに、すっかり魅了されてしまいました。この感動をたくさんの人と共有したい、というのがラングスジャパンの始まりです」。どの商品もすべてこの感動に始まり、ヒットはあくまでも結果論。商品選びは、感動できるか、世の中の人が本当に求めているものかどうかに尽きるという。結果的に社会貢献するアイテムだけがラインナップされていった。
 そして、ブーメランのヒットを陰で支えていたのは医師である夫だ。「1998年、オーストラリアで開催された第1回ブーメラン世界大会の日本代表として夫が出場してくれたんです、病院に辞表まで出して」。その後2年間、医師の仕事は土日に集中し、子育てに専念して妻をバックアップした。以降、ラングスジャパンのカタログには、〝世界大会使用ブーメラン〞と書き加えられ、しかも世界大会使用という栄光を背負ったブーメラン輸入は、スポーツにカテゴライズされ無税となった。

会社での仕事は練習、家庭が本番。車輪は一方に力が入りすぎるとすぐにバランスを失う

 夫と二人三脚で会社を立ち上げた小林社長。仕事と家庭は人生における両輪であり、大切なのはそのバランスだという。「私にとって難しかったのは、バランスをとること。ビジネス経験もない主婦が3人の子供を育てながら会社を立ち上げるのも大変でしたが、家庭とのバランスをとることが一番難く、今も課題山積み」。
 車輪はどちらか一方に傾くと、たちまちバランスを失う。「バランスをとることに比べたら、仕事にただ打ち込むだけなら、簡単!」と笑顔で言い切る。「だからスタッフには〝仕事は練習、家庭が本番〞という話をよくします。仕事で嫌なことや大変ことがあったら、それを乗り越える力を職場で鍛え、取引先を満足させるホスピタリティーを身につけたら、今度はその力を使って家族を笑顔にしてね、と」。

夫婦間にルールを作ると柔軟性が妨げられバランスは取りにくくなる

 「相手の動きに気を配っていたら、次に自分のすべきことは自然にわかってくるもの。だから我が家にはルールはないんです」。小林家には、食事当番や皿洗い当番、お迎え当番といった役割分担はない。ルールを決めると夫婦間の家事量と子育てバランスが保たれるように見えるが、むしろ逆効果になる危険性もある。
 「お天気が毎日違うように、日によって状況も条件も異なります。だから時間的・精神的・体力的に余裕がある方がやればいい。そのためには、お互いがそれぞれの動きをよく感知して、思いやることが大切ですね」。感知とは、外界の変化に直感的に感じて気づくこと。まさにリップスティックで必要とされるバランス感覚そのもの。感知できれば、想定外のことにも即座に反応できる。「もし仕事と家庭のバランスをとる自信がないなら、優先するのは家庭」。
 アスリートの場合は、バランスを保つことで、安定したパフォーマンスを発揮し、競技能力を向上させる。夫婦間もバランス感覚がないと、お互いの能力向上は望めない。

頭と体と心。仕事と家庭。人と人。すべてはバランスで成り立っている

 キャスターボードはバランス感覚を鍛える〝遊び〞だ。できないことに果敢に挑戦し、できるようになった喜びを味わい、次の新たな試みへ挑む。遊んでいるうち体幹が鍛えられ、気づくとケガも病気もしにくい体になっている。これこそ人々にワクワクを創出するラングスジャパンマジックともいえる好循環だ。

ラングスジャパン
代表取締役社長
小林美紀さん

フジテレビドラマ
「隣の家族は青く見える」
で大活躍のキューティタートル

さて、あらためてバランスとは?
キャスターボードに乗った人ならわかるが、スピードが予想以上に出たり、思わぬデコボコにしょっちゅう出くわす。〝想定外の外的刺激を楽しめ!〞そんなメッセージがラングスジャパンの玩具にはある。「ジムに配属されているスポーツ万能で筋肉隆々なトレーナーたちでも、初めは全く乗れないんですよ(笑)。でも、練習すればバランス感覚はすぐ磨かれます。大人はリップスティックを子供が遊ぶものと決めつけていますが、代官山のジムではキャスターボードを使ったパパ向け体幹トレーニングもやっています。ぜひ挑戦してみてください」

ラングスジャパンにまだスタッフもおらず、小林社長が家で1人で仕事をしていた頃。「このダイニングルームが私の仕事場で、取引先から電話がかかってくると口に指を当てて“シー!!”と、子供たちに合図(笑)」。

コブラクションミックス代官山はあの野球イチロー選手の兄、コブラクションテープの考案者鈴木一泰氏と社長長女が運営するジム。屋上はキャスターボード、リップスティックで体感トレーニングも!

パッケージ、動画などのモデルは長男がいつも協力。子供の頃からラングス商品の良きモニターでもあり、今後はラングス商品がいかに子供たちの発育に役立つかを調べ医師として母親である社長の役に立ちたいと話す。

#ブーメラン

勢いよく投げると、きちんと手元に戻ってくるブーメラン。このブーメランから、ラングスジャパンの歴史が始まる。

#プラズマカー

海外では子供だけの乗り物だったモノを、日本では2人乗りの写真で提案し、親子で楽しめるものに進化させ、海外とは一味違う親子のスキンシップアイテムとしての提案をしている。(耐荷重100kg)

#リップスティック

遊びながらバランス感覚が鍛えられることで人気のアイテム。デザインはヘルメットに至るまで、社長自ら手がける。

#キネティックサンド

手や部屋を汚すことなく、室内で砂遊びができる不思議な砂。98%は純粋な砂で、残りの2%に秘密が隠されているそう。

#マイドリームパピー

マンションや飼育費用など様々な事情でペットが飼えない家庭へ。動きから鳴き声に至るまで、リアルを追求したペットトイ。


ラングスジャパン

1987年創業。親子の心を掴むトイを、海外から多数発掘して日本に広めている、玩具の輸入総代理店。遊びながら身体を鍛えられるスポーツトイを中心に、自社製品へと幅は広がっている。

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